何歳になっても若々しく!脳のみがき方
人の名前が思い出せない、物忘れがひどくなったような気がする・・・。
年齢とともに脳の衰えを自覚する人は多いと思います。
実際に40歳を過ぎるあたりから脳機能が低下するのですが、こうした脳の衰えは個人差があります。
どうやらそこには“脳”の使い方が関係しているようなのです。
中高年になってもいつまでも若々しく元気でいるために、脳の老化を予防する方法を学びましょう。
知っておきたい!脳の成長と衰え
私たちの脳はどのようにして老化するのでしょうか?
最初に脳の成長と衰えについて知りましょう。
人間らしさを生み出す前頭葉の役割
脳のはたらきはニューロン(神経細胞)によって支えられています。このニューロンがもっとも多いのは生まれた直後で、その後は年齢とともに減っていきます。
減るといっても脳全体からすると2~3%の量ですから問題ありません。
ただ、ニューロンが減りやすいのは記憶や判断にかかわる側頭葉、頭頂葉、前頭葉という部位です。
人の脳はサルの約3倍の大きさで、とりわけ発達しているのがこのうちの前頭葉です。
「人の気持ちを感じとる」「何かをがまんする」「段取りをつける」「意思決定をする」。
こうした人間特有の高次の機能は、前頭葉が受け持っていると考えられています。
つまり“人間らしさ”と深くかかわっているのが前頭葉なのです。
40歳ぐらいから脳の衰えが始まる
前頭葉のはたらきを年齢ごとに調べた調査によると、生まれた時から20歳過ぎにかけて、ゆっくりと上昇します。その後は20~30歳をピークに、40歳を過ぎると急速に衰えてくるのです。
興味深いのは、40歳以降から脳の衰えにバラつきがでてくること。
年齢を重ねても20歳ぐらいと変わらない高い機能をもつ人もいれば、同世代の平均値より大幅に低い人もいます。年をとればとるほどバラつき、差が広がっていきます。
中高年以降、脳の機能に個人差がある原因は、日常的な生活習慣にあることがわかってきました。
平均寿命が短かった時代なら、脳の衰えはそれほど問題にならなかったでしょうが、今や80歳、90歳まで長生きする時代。脳の衰えは高齢になってからの生活に大きな影響を与えます。
前頭葉の機能を衰えさせない、脳の老化防止にいい生活習慣を身につけましょう。
脳は年齢を重ねると成長する側面もある
「脳の老化」というと、脳細胞がどんどん減って記憶力が衰えていくようなイメージがあると思います。けれども、これは正確ではありません。
脳に蓄積された情報は経験を重ねるほど多くなります。ですから20歳よりも40歳のほうが、40歳よりも60歳のほうが、より豊富な記憶を脳に蓄えていることになります。
さまざまな経験から得られた知識や知恵は、年齢を重ねないと身につかないもので、その意味では脳は若いほどいいというわけではなく、年とともに良くなる側面ももっているのです。
では脳の老化では何が問題なのでしょうか。それがワーキングメモリー=「脳のメモ帳」と呼ばれる機能なのです。
ワーキングメモリーは一度に複数の作業をするようなときに活発にはたらきます。また必要と思われる記憶や情報を引き出したり、それを組み合わせて結果を出す作業を行っています。
若いときにはワーキングメモリーがよくはたらき、たくさんの作業を同時にこなし、何でもすぐに思い出すことができます。
ところが、40歳を過ぎてワーキングメモリーが衰えてくると、人やモノの名前がなかなか思い出せなかったり、複数の作業をするうちに最初にやっていたことを忘れてしまう、といったことが起こってきます。
監修 諏訪東京理科大学教授 篠原菊紀(しのはらきくのり)さん
1960年、長野県生まれ。東京大学、同大学院教育研究科博士課程修了。専門は脳神経科学、応用健康科学。日常的な脳の活動を調べ、教育から産業まで多方面でその研究成果を活かす試みを行う。各種フォーラム・実験への参加、テレビ・ラジオ番組への出演・監修、講座などで幅広く活躍中。著書に『その気にさせる脳のつくり方』『ボケない脳をつくる』『脳が冴える40代からの生活習慣』ほか多数。